構造設計のすすめ

構造設計のすすめ01
序章:構造設計者への第一歩

はじめまして。お兄は建築士と申します。

私はTwitterにて、『お兄は建築士(@momotaros1983』というアカウント名でいろいろなことを発信しています。このたび、一篇の簡易noteを書いてみようと思いました。

初めてブログを執筆しますので、拙い文章であることをお許しください。

1.構造設計概要

■はじめに

この記事は序章にすぎません。

構造設計とは何か、構造設計者は何を考えながら仕事をしているのかという基本的なことをメインに述べています。

具体的な構造計算手法の本は世の中にたくさんありますが、当ページは「構造設計という仕事を知るきっかけ」、「建築構造に関する本を手に取るきっかけ」となればよいと考え作成したものです。

さて、近年多発する中規模地震や過去の巨大地震の教訓から、建築主側の「耐震」に対するニーズが高まっていることを実感しています。そのため、構造設計者は建物の構造安全性とその仕事の専門性を建築主にわかりやすく的確に説明する責任があります。

また、意匠設計者・設備設計者とお互いの分野に関心を持って協働しない限り、建築主の求める良い建築をつくることはできません。このような構造設計者の職務の重要性を解説した書物はあまりないのです。

まずはこのブログで簡単に構造設計という仕事への第一歩を踏み出してもらえればと思います。初歩的な内容となっていますので、ある程度経験を積んだ構造設計者の方にとっては当たり前の話となっているかもしれませんが、皆様のお力添えどうぞよろしくお願いいたします。

■構造設計という仕事

建築構造設計者は「かたい」というイメージを持っていませんか。

それも無理はありません。

建築基準法をはじめとする種々の法令・指針で構造の規定が定められており、構造設計者は意匠設計者のユニークなアイデアも、それら規定に基づいて部材に生じる応力が許容応力を超えるものなら「NGである」と叩きつけることができるからです。

つまり逆を言うと、構造設計者に対抗するには少なくとも構造設計・構造力学の基礎を知っておく必要があるということです。

構造設計者も、柔軟な発想で他分野の情報を知ることは大切なことで、なんにでもNOを突き付けてはいけないと考えています。

プロジェクトを円滑に進めるためには、お互いの歩み寄りが必要で、構造設計者も意匠設計や設備設計のことを知っていなくてはなりません。知ったうえで構造設計者は意匠設計者の出す難題を検討し、意匠設計者が納得できる構造的な提案ができるよう志すことが大切です。

建築(意匠)を知る構造設計者と構造を知る意匠設計者がタッグを組んだとき、はじめて良い建築は完成すると言えます。

他分野のことを知り、構造設計者が意匠設計者や設備設計者と設計を進めていくには、相当量のバイタリティを必要とします。課題に対して不可であるという意見を突き通し諦めるのか、最後まで良い建築を目指して粘り強い対応を続けるのかでは、お互いの信頼度も大きく変わってきます。

構造設計は、非常に苦しく長い戦いですが、とっても楽しい仕事です。自ら描いた図面が建物として具現化した際の達成感は例えようがありません。登山の最終目標は山頂ですが、構造設計の面白さは山頂だけでなく、苦しいと感じる山の中腹にもあるのです。

その過程を乗り越えるため、そして最終目標までに立ちはだかる困難に打ち勝つためにも、若いうちに体力や気力を養っておくことをおすすめします。

構造設計では建築にかかわるあらゆることを考えながら全体をまとめる能力が必要になります。構造設計業務は、以下の通り多岐にわたります。

これを見るとギョッとしてしまうかもしれません。お察しの通り、かなりのハードワークですので、体力と気力は構造設計者にとって必要不可欠なものなのです。

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構造設計という仕事

■構造設計者の役割

世間的には、「構造設計」、「構造計算」、「構造計算書作成」のそれぞれの違いに対して、十分に分別、理解が成されていないと感じています。理解するには、建築設計業務における構造設計者のスタンスを正しく把握することが大切です。

先ほどの図の通り、構造計算や図面・計算書の作成は、「構造設計」という大枠の一部にすぎません。意外かもしれませんが、構造設計に基づく構造計算書および構造図は、携わる構造設計者によって結果はまちまちで、ひとつとして同じものはありえません。なぜなら、構造設計とは、コンピュータに計算条件を入力した結果を構造図にまとめることが業務ではないからなのです。

 構造設計は、何を目的に構造計算をして、何を目的に図面を起こすのかが大切です。建築主の求める建築は何かをしっかりと把握し、そこから建築の構成、かたち、規模、構造種別、架構形式などを想像しつつ決めていきます。

居室を広くするための柱梁の構成、歩いても揺れない床の構造など、構造設計者は求められる空間の在り方を十分に把握して、それをどううまく満たしていくかを考えられる人でなければなりません。

課題となる条件を統合させ、実現可能な構造を創案するには、空間や力学を理解する能力が必要となります。また、自分が創案した構造が、自然界や人間社会に起きる多くの出来事に対して、どのように挙動するのかを予測し分析できなければなりません。

その構造により何が起こるのか無知のまま創案しているようでは、本来の構造設計の役割は果たせません。構造設計者には鋭敏な洞察力が求められるのです。

構造設計は、単なる作業ではなく、立派な創造的な行為なのです。

実のところ私は、2007年の構造計算適合性判定制度の開始以降に現在の業務に携わりました。昔を知らずに仕事をするのと、歴史を知って仕事をするのでは違いがあり、後者はその経験が大きな財産になっていると感じ、非常にうらやましく思っています。

つまり、私はベテランの構造設計者と比較して、数式の成り立ちや諸係数の起源を熟知しているわけではないのです。

しかし私は、経験が浅いことを悔しがる必要はないと考えています。後年になればなるほど膨大な知見の蓄積から各文献や技術が充実してくるため、情報量では負けることはないと考えているからです。

つまり数式が膨大に存在しても、感覚的にその意味合いを理解しておけば、あとはその書籍群の中から必要な数式を選び出せばいいだけなのです。 

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各基規準・指針

我々が黄色本と呼んでいる「構造関係技術基準解説書」についても同じで、中身のすべてを暗記する必要はなく、本のどのあたりにどの内容が記載されているかを頭に入れておけば十分に構造設計をおこなうことが可能です。

このことは飛び抜けて賢い人でもない限り、ベテランの構造設計者にも同じことが言えます。私のような中堅の技術者がベテラン構造設計者に相談にのってもらう際も、一緒に書籍を探して、ともに悩んで答えを導き出す場面が多々あります。

本に載っていることは決して逃げないので、講習会のように教わらなくても実際に使う時になって調べればよいでしょう。それらの文献を参照しながら最終的には、構造設計者自身が自分のもつプロジェクトに対して「自分で調べて自らやり遂げた!」という意識を持ち、建物が建った際には大きな喜びを見いだせるようになることが大切なのです。

2005年の構造計算書偽造問題は、構造設計者の仕事がいかに社会に認知されていないか、構造設計者の持つ常識がいかに社会の理解とかけ離れたものであるかに気付かされた事件です。私は、この出来事を反面教師として、構造設計者の職務と自ら設計する構造体の合理性を極めて平易な言葉で伝えていけたらと感じています。

建築基準法では、最低限の耐震基準を定めているにすぎません。構造設計ではこれを満たせばいいというものではなく、種々の設計法に含まれる仮定や精度等を考えて、余裕度を持たせるなど工学的判断によって決定されるべきものです。そして構造設計者の責務は、その理念を守ると共に、自分の判断をいかにわかりやすく建築主に伝えられるかにかかっています。 


 まとまりのない文章で大変申し訳ないですが、最後までお読みいただきありがとうございました。好評をいただければ、内容を充実させていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。